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<About Music>
北朝鮮からの拉致事件被害者帰国という衝撃的な現実は日本人の歴史感覚を問い直すものだった。意志を無視した力によってねじ曲げられた時間と空間。あまりにも多くのことを問いかけるこの出来事から感じた思いは何故か[Dancer In The Dark]から感じた皮膚感覚とリンクするものだった。金子飛鳥によるストリングス・アレンジはその深いエモーションを見事に表現してくれている。アレンジャーとして普段活動している僕が何故他者にアレンジを依頼するのか?と思われる向きには「音楽という表現がどれほど相互理解と全幅の信頼の上に成立しているのか」を改めて認識していただくことになるだろう。この曲のストリングスの持っている痛いような鋭さは飛鳥にしか書けない音符達から生まれている。演奏してくれた弦の精鋭達によってその引力が更に強いものとなったことは間違いがないが。この曲も当初発注していなかったのに「資料のDVD-Rに入っていた」ためにAlexがリズムトラック・プログラミングをしてしまった!?という珍しい経緯を経て(勿論その高いクオリティのために)採用され、もともとポリリズム的なアレンジだったベーシックトラックに重さと粘りを付加してくれている。山本拓夫の管アレンジも的確でかつ個性的なトーンを与えてくれている。

バスクラの深いトーンが好き、という共通項の上に立った楽しい作業であった。エンディングのアイデアを始め、ドラムのエフェクトなどTchadが施した数々のトリートメントは「歌詞を深く理解している」としか思えないようなものばかりであった。単純に音楽への反応の中からこうした理解が生まれるのだろうか?だとすればその洞察力はどの様にして育まれたのだろう。

<About Words>
普段アレンジャーとして色々なアーティスト達と仕事をしている時にも言葉と音の関係についてはいつも感心したり苦労したり、神経を使っているつもりである。それなのに、この曲はサウンドが先行してはっきりした方向を持ったが為に「作詞者」の自分が路頭に迷う事になった。日本語の持つ情報量が具体的な事物を描写するには必ずしも適していない事、今更のように痛感しながら「全く意味が分からないであろう」歌詞を「意味がすぐには分かり難いであろう」歌詞にまでまとめるのに時間と試行錯誤が必要だった。

井上 鑑

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