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#14. The weight

80年代、大分昔話ですが、楽器メーカーの人が「楽器屋の客10人の内8人はGuitar、残り2名がDrumやBassその他」と言っていました。Guitarの影響力は甚大ですし、様々な表現エリアをカバーしています。

 

Eric Clapton, Jeff Beck, Jimmy Pageという(旧?)3大ギタリストが "ある時、3人でひそひそと話をしているのを見て、音楽評論家が「3人で何を話しているんですか?」と尋ねたら「そりゃー良いマネージャーがいないか、と言う話に決まってんだろ」と言われた" という話はLondonの定番Studio Jokeです。

 

もちろんこの3人は素晴らしいですが、個人的なチャートではAdrian Belew, Ry Cooder, Mark Knopflerなど、ちょっと癖のある人たちが上位に位置します。

 

そして訃報が飛び込んできたRobbie Robertsonはその中でも特別な存在でした。「The Last Waltz」のライブ映像はセンセーションでしたが、それ以前に耳に焼き付く独特のハーモニックス混じりの演奏スタイル、フレーズの端々にまで歌が満ちているフレージングが印象的でした。

 

BeatlesにせよStonesにせよ個性の強いメンバーが偶然揃って初めて生まれる化学反応、The Bandも例外では無いですがリーダーとしての存在感も彼の魅力でした。

「The weight」は初めて聴いた時に即覚えてしまうようなイヤーキャッチ力の権化、サビ終わりの追いかけコーラス部分の完成度は「どうやって作ったのだろう?」と訝るしかないレベルです。ルーツミュージックをベースにしている彼らの音楽性を考えれば、何処かに原石があるに違いないのですが、RockなのにRock的なイディオムを越えた叙情性や人なつこさがこれらの名曲を輝かせている要素に違いありません。

 

Bob Dylanに見いだされる以前からその萌芽はあったのでしょうが、Jewishの父・Native Americanの母から生まれカナダで貧困の中で育った学究肌、社交性皆無?だったという人柄はやはりただ者では無かったのでしょう。

 

僕は彼のソロアルバムがとても好きですが、どこか「確信を持てていない趣」が漂っていて、それが深みに繋がっています。自らの出自に向かい合う作品作りを深めたのはThe Band解散後、もう少し正確には放り出した後の歩みの中でした。

 

しかし、ルイス・ブニュエルの映画に影響されたという「The weight」の世界、宗教や哲学を主題にする姿勢そのものがそうした方向性を内包していたに違いありません。僕は勝手に意訳して日本語(裏)カバーしていますが、実際Bob Dylan作品に負けない精神性と多義性を持った名作です。

 

 

Put the load right on me.

 

あなたは何と聴き取りますか?

© 2025 Akira Inoue / Pablo Workshop.

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