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#19. Clocks

"Band Soundは絶滅した" と言われますが、僕は全くBand形態に愛着が無く、楽器編成も作風も常に変化していきたいタイプなのでStudio Sessionを満喫して来ました。

 

とは言え、自分を加速してくれる演奏家が山のように居るはずもなく、次第にアンサンブルは固まっていきます。

結果的に仕事の中でBand Soundの要素が生まれ出てくる、という訳で、あまたの名アーティストが出自のグループを離れてもひとりで作っているわけじゃない、という実例はPaulもJohnも、Peterも大瀧さんも…。

 

でも、近年の主流はアンサンブルの魔力よりはDigital部品を精緻に組み上げる手法。展開の魅力よりは反復の陶酔が主で、大方の曲はアントニオ・カルロス・ジョビンが喜ぶとは聞こえません。

 

さて今回はColdplayに何故か眼が行きました。

僕は複眼的に世界を見たいのでBBC WorldのNEWSを常用しているのですが、公営放送?のBBCにもCMが結構入ります。

トルコ航空の提供旅番組とか…。

 

そして、国際宅急便DHLのCMにColdplayが登場するのです。女性ドライバーが運転中口ずさんでいるメロディーが映像のパンと共にVocalのChris Martinの歌とライブ映像に変わる、という定番展開。ただ、彼の声の透明感とStadium Rockだぜ!という雰囲気のLiveシーンが妙に残るのです。

 

「誰かに似ているようで似ていない」Chrisの声はRadioheadのTomのように直ぐ認知出来る声ではないけれど、短いCMの中でメロディを伝える力は強力です。

 

かつてモーツァルト、ベートーベン、ブラームスが「音態模写」を連ねて深化した如く、ColdplayにはStingやU2の影がちらつきます。Vocalの母音の伸ばし方、フレーズ途中での鼻への抜き方、歌い出しのタイミングの取り方は「英国音楽文化良いとこ取り研究」の成果。

 

 

さて "Clocks " (2002) の場合、突如現れる<You Are>という反復メロディー(というかフレーズ?)が実に巧妙に出来ています。こちらは当時既に「OK Computer」を発表していたRadiohead研究が活用されています。

 

ギターを極力限定的に扱い、鍵盤楽器のアルペジオを生かす手法も「もろパクり」なのに、空気感が全く違うのが鋭い。Eb~Bbm~Fmという和音の流れはイーノ風のシンセで支えられ、暗そうで明るい、光の当て方がお手本とは質感が違います。

 

新鮮な手法やアイデアと耳なじみ安心のバランス、絶妙です。更に、僕が感心したのはMain VocalとChorusとの関係。

Backing Chorusがほんの少し重たいタイミングでMixされてうねりを作り出している点。リズムの縦線を整え過ぎてしまうと、音楽は小さくなっていくのです。

© 2025 Akira Inoue / Pablo Workshop.

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