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#20. Heartbeat

"King Crimson"を語るのはあまたの信奉者、博識を誇るひと達の前ではいささかためらいます。

鈴木家の音卓では話題にあまり上らなかったかも、ですが多分慶一さんの方が僕よりもよっぽど詳しいに違いありません。

僕は一点集中攻撃派なので、聴き込むという行為も俯瞰的ではないのです。

 

そんな訳でTony LevinともBill Brufordとも録音を一緒にしたのですが、間違ったことを言わないように薄氷を踏むという感じでした。Tonyの瞬発力、Billの冷静さは音楽的イメージ通りでしたが、英米のメンタリティの違いも興味深いものでした。

Billは変拍子の曲を全部4/4に書き直して自分の譜面を作っちゃうし、Tonyは譜面など意に介さないし、共通点は話題の幅広さと話術の巧みさ、でした。

 

印象的なのはKing Crimsonのリハーサルの話。

「Adrian Belewが曲を思い出すまでRobert Frippが待っているのがリハなのさ」とTonyが言っていたのでBillに聞くと「最初に1週間はかかるね」だと…。僕にとってのCrimsonはまさにAdrian在籍時の作品なので、忘れられないエピソードでした。

 

Band史的には難しい時期だったようですが(1982年頃だと思います)ロンドンで彼らのLiveを見ました。AdrianとBillのポリリズム・パーカッションDuoで始まったセッションは僕には衝撃的でした。確かその少し前、Dire StraitsのLiveを見て音響的完成度に打ちのめされたのですが、Crimsonは「生きた現代音楽」を生まれて初めて聴いた、と感じました。

 

笑ってしまったのは、あれこれ酩酊している聴衆が、変拍子曲でも全く関係なく体で音楽を楽しんでいたこと。手拍子がズレるズレる!でも何故かエンディングは手拍子と合うのです。その時は不思議でしたが、今となっては何となく納得します。インド古典音楽のような奇数の細かい拍子でも、大きく捉えると人間的なうねりに必ず帰結するのだ、と自分たちも演奏活動する中で体得して来たのでしょう。

 

 

さて、この曲はその時のLiveでもとても印象的でした。西海岸発信のギターサウンドとは全く異質のアプローチ、音楽的に言えば4度の積み重ねの持つ新鮮な透明感と発音後の揺らぎを上手に使う奏法を操るAdrianとギター教室をステージ上で開講している様にしか見えないRobertの対比が何とも変で、アンサンブルという表現方法の固定観念がガラガラと崩れ落ちました。

 

ビート詩人達の作品からインスパイアされたアルバム「Beat」に入れるべきではなかった曲!?だとメンバーは述べているようですが、僕にとっては至高の名曲!!です。

© 2025 Akira Inoue / Pablo Workshop.

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