
#06. Moanin’
Joni Mitchellのサイトでこの人達の素晴らしさを知ったのは僕だけではないようです。
でも、Lambert, Hendrix & Rossと言う名前はお恥ずかしいことに、Joniに教えられるまで全く知りませんでした。
Jazzに造詣のある人たちならば、当たり前も良いところの存在⋯。
Jazz Vocalの歴史に輝く存在な訳ですが、無知な僕を引きつけたのは Joniの言葉。
「私はBeatlesをみんなが学んでいた時代にLambert, Hendrix & Ross から音楽を勉強するのに夢中だった」
という発言を読んで、その日のうちに彼らのアルバムを買ったのでした。
「Moanin’」が収録されているアルバム「The Hottest New Group In Jazz」の録音は1959年のこと。
なんでもJazz Vocalの作品としては世界初の手法、つまりBandとは別に「歌だけを後からダビングで録音する」という作り方をしたのだそうで、様々な意味で革新的な作品なのです。
しかも、絶妙な声質の違いに加えて、それぞれ表現力の幅のあるこの3人は、このレコーディングのために集められただけで、元々グループだった訳ではなく「売れちゃったから流れでグループになった」という幸運の巡り会いだったのでした。
まぁ、こうした必然の偶然は珍しくもないですね。確かにU2が同級生バンドだなんてかなりの幸運です。
さて、話は戻りますが、Joni Mitchellの作品の中にBeatlesの影を探すのは難しいのは真実です。
初期の作品の独特の透明感にはマージービートにつながるグルーヴは見当たりませんし、後期の熟成度には Jazzのエッセンスがあふれています。しかも、Modern を通り越して Fusionの巨人達とのセッションですから、次世代の音楽を先取りしていた感覚だったのです。
だとすると、修業時代の彼女にとってBeatlesは、逆にどのような存在だったのか? 興味は尽きません。
彼女の教科書だったと知って聴いてみた僕にとっても、この人達の音楽はちょっとした驚異でした。
僕にとって精緻なJazz Vocal Teamとは Manhattan Transferだったので、比較するとこの人達はかなりPunkだったからです。
選曲は王道の曲を取り上げていても、例えば「Summertime」のarrangeは3人のパートが音程的にもかなり離れていて、
しかもアグレッシブ。
女声は突然人が変わったかと思うほど激変した音域とアプローチを超絶技巧で聴かせるといった具合で、ある意味非常にプログレッシブなことに感銘を受けました。これは確かにJoniの活動につながる先人だ、と納得もしたのでした。
元祖Rapか!?と言いたくなるような言葉の連射による男声スキャット曲も只事ではありません。
あまりに凄すぎて笑えます!