
#17. Cello Sonata/Sergei Prokofiev
いきなりクラシック?と思われるかもしれませんが、僕が鼻歌でも歌える近代作品です。
チェロソナタ(ハ長調。作品119)は1949年の作品、プロコフィエフ唯一のチェロソナタ。登場のきっかけは亡父・井上頼豊の愛弟子、苅田雅治さんの演奏をつい最近「70歳記念コンサート」で聴いたことでした。
僕にとっては亡父とピアノ村上弦一郎さんとの共演で何度も聞いたことのあるなじみ深い曲で、改めて曲の完成度、そもそも作曲家としての才気に打ちのめされたような訳です。そしてプロコフィエフを今見直してみると、沢山の問いかけや思いがわき上がってきます。
この作品が生まれてから80年足らず、世界も文化も音楽もそして環境も驚くほどに変容しました。偶然が無ければ日常生活の中には響いてこない、本来音楽とはそんなものでしょうが、ひとりの天才の心の旅が時空を越えて伝わるとは、生演奏はやはり美しい奇跡を起こすものです。
さて、プロコフィエフはロシアの作曲家と思われがちですが、ウクライナ生まれです。
しかも、最近日本人にもイメージが伝わる地域、ドンバス・ドネツク炭田の近く、バフムート郡ハリコフの近郊出身というのですから、今まさに激戦地になっている地域ではありませんか…。
彼は名声を得た後30~40代のかなりの時期をパリやアメリカで過ごし、最終的にはモスクワで活動しました。ストラヴィンスキーの「ペトリューシカ」をパリで聴いたり、ドビュッシーと会ったり、視野も広く新しい音楽に対して熱意を燃やす人だったのですが、ソビエトの政治文化状況中では名指しで批判を受ける始末でした。
晩年の病気治療中、名手ロストロポーヴィチの協力で(どのような作業をしたんでしょう?何を教えてもらったんでしょう!?めちゃ興味が湧きます)作曲されたこのソナタ。一見単純+素朴に聞こえるモチーフの中に様々な文様のように古典からジャズまでの音楽の諸相が編み込まれています。
この人の即興演奏は最高レベルのジャズだっただろう… 僕にはそう思えてなりません。
本人がピアノの名手だったこともあるでしょう、ピアノパートの無駄の無い構成感、ハーモニーのグラデーションをひとつふたつの音の変化だけで描ける才気は流石です。
おかしな推薦文ですが「ビートルズが好きな人は是非聴いてみて」と言いたい僕です。
メロディーもビートもハーモニーも最上の瞬間がここには在ります。
P. S.
お勧め文献「プロコフィエフ」井上頼豊 著
音楽之友社 ISBN-10. 4276220319 ISBN-13. 978-4276220317
音源 ロストロポーヴィチ / リヒテル 演奏版
独DECCA BLK16121 モノラル
入手には気合いが要りそうです…。

