
#18. あたりまえの虹
来生たかおさんとは沢山の仕事を共にしてきました。
印象に強いのは初期に彼のLiveに参加した時、佐久間正英氏と一緒になったこと、当時はキティレコードが風向きを変える役割を果たしていた時期でした。シャイな来生さん、自信に満ちた佐久間さん、彼がLive Bandベーシストとしてそこに居ることが不思議な感触でした。
ただその時感じたこと、来生さんの音楽性は非常に明確で、細かい指示をしたり強権を振るったりしなくても曲自体が指し示す世界観が自然に演奏者を導くのだ…という印象は、その後長いお付き合いの中で何時も証明されていくことなのでした。
お姉様、来生えつ子さんとも沢山のプロジェクトでご一緒しました。彼女が弟君を意味して発音する「Takao」はTaが強勢でピッチが高くkaoに向かって下降↘するのが印象的で、ほのかに暖かい風が流れるのでした。
その兄弟愛は薬師丸ひろ子さんデビューシングル「セーラー服と機関銃」と異名同曲(こんな言葉自体滅多に現れませんが)「夢の途中」の同時リリースというストーリーが示すとおり、日本の音楽界には希有な距離感と透明感のチームです。
どちらかと言えばギター文化が優勢だった80年代の音楽界では来生さんとユーミンは鍵盤楽器文化の旗手という印象でした。そのせいか、僕にとっても来生さんの曲は歩みやすい道筋という感覚が強く、ギルバート・オサリバンに導かれたという彼の背景は納得でした。
ギルバートのヒット「Alone again」を聴き直すとカーペンターズのサウンドとの類似性に驚かされます。白人文化の香り、端正な構築、そしてKeyboard Soundが曲自体の背骨となっているからでしょうか。その日本版たる来生サウンドですが、この「あたりまえの虹」は「セーラー服〜」のB面曲で作詞家は小椋佳氏、これまたキティ人脈の源流的存在によるものです。
実は僕も発売後42年経って初めて聴いてみた、という存在で、知る人ぞ知る佳曲ですがひろ子さんの初々しい声が輝いています。セーラー服、機関銃の二語は異次元対置ですが、あたりまえ、虹という二語もおよそ馴染まないカップルですよね。
しかもメロディーの流れの中ではNi↘jiというイントネーションで歌われるので、リリース当時のリスナーの多くが「あたりまえの2時」すなわち午後の一瞬を歌った歌だと聴き取ったのだそうです。
さて、この佳曲はA面候補だったのでしょうか?
十分有り得る、と思う僕です。

