
#23. FOOL of ME
ミシェル・ンデゲオチェロという名前を知ったのは何時のことだったのか。
しかも、どのようにして彼女のアルバム「BITTER」を手に取ったのか?1999年のリリースという事なので、当時仕事をしていたイギリス人の誰か、が聴いているのを耳にしたのか⋯
この人がベーシストとして大活躍しているなどとは全く知らず、先ずはジャケットの秀逸さに衝撃を受けたのでした。
およそfocusの来ていない写真、これはひとなのか?彫刻なのかな、と思う様なにぶい色調、でもどこか温かみがあって暗いだけではないその強さは、まんま音楽の中身を表していました。
そしてアルバムを初めて聴き始めた時には、かなり戸惑いました。冒頭の曲「ADAM」は弦のアンサンブルだけのいわば前奏曲で、これまた独特の暗さが漂う湿った空気、そこからスルリと曲つなぎで始まるのがこの「FOOL of ME」な訳で、ここまで引きずり込まれて初めて彼女の奥行きのある歌声が出現するのです。
曲自体は攻撃的なサウンドでは全くなく、メロウでマイナーコードの作りですが、最初1コーラス分は(故意でしょうが)Bassが入っていません。そんな訳で彼女の声質の奥行きというか深みが低音を支える、というイメージが拡がります。
引き算こそが造形の強さを生む、という編曲の極意と言うべきでしょう。
そして<You made a fool of me. Tell me why>というリフレインに繋がるのですが、ここでもRhythm arrangeの粋さが光ります。6/8のリズムがこの曲の基盤ですが、リフレインの途中でモーフィングというか擬態というか⋯
backのリズムの取り方が一瞬別世界に飛び込む様な時間が仕掛けられています。
あまりにも自然だし控えめなので、気がつかれないことの方が多いのでは?という演出ですが、認識して聴き込めばその深淵さは尋常では無いとお判り頂けるでしょう。Nina Simoneの作品を取り上げたアルバムも作っている彼女、音楽はもちろん、自らのルーツを見つめる視線はゆるがないものなのでしょう。
「永遠のモータウン」にもベーシストとして出演していますが、Nina Simoneの「Four Women」をTRIBUTEして取り上げています。Bass Lineはオリジナルを踏襲、でも世界観全体が「BITTER」と同質の透明度で現代性に満ちています。
Nina Simoneの時代には直球でぶつけていたメッセージが、対象となる世界全体の変化と共にくぐもった美学を生んだ、という事なのでしょうか。
ふたりの表現の共通項と差異、現代を考えさせられる示唆に満ちています。

