「地団駄ジダンだ」


ワールドカップが終わり、ちょっとした愛国心の季節が過ぎ去った。フランスは見事に優勝したけれど、国籍は確かに同じでも昔のフランスとは違う新しい、というか異種のフランスを体現しているようなチームに見えてしまった。移民という言葉自体が民族国家という今や脆いと言うべき概念が前提の言葉で、そもそもアフリカ大陸から大々移動を続けながら地球上に拡がっていった種としての人類を思えばすごく限定的な言葉。監督のデシャンの出自は不勉強故知らないのだけれど、次期監督最有力のジダンも今回の優勝に限りなく貢献したカンテもエムバペもポグバも多民族国家を体現するような人たちだ。FWジルーは生粋のフランス人だけれども、グリースマンはポルトガル系のバックグラウンドを持ち、GKでキャプテンのロリスはカタルーニャ系でスペイン代表を選択することすら可能だったのだとか。そもそもサッカーその他スポーツのナショナルチーム自体が以前に比べて、純度よりもはるかに経済的価値を問われる時代になっているのだ。もちろん問題点は多々有るにしても、純粋な民族を夢見たヒットラーやその同時代人たちの描いた像と違ってきていることは喜ばしいと僕は思う。
 
国家という概念が変わってきているのは間違いがないね、などと他人事のように思っている日本も、実はもっとあやしい形での移民大国になって来ているらしい。先日NHKで放送されていたメキシコとアメリカとの国境問題、不法移民の問題を取り上げたドキュメンタリーを見ていたら、アリゾナで不法移民狩りを続けているボランティア民兵組織のリーダーが言っていた言葉が印象的だった。「僕は日本好きだよ、羨ましいよ!周りが全部海だからね、僕たちみたいな活動をする必要が無いしね」(俺、と書くとすごくやさぐれた感じになるので敢えて僕、だってどっちも同じ「I」)
 
そんなもんなのか?と思わず首をかしげてしまった。確かに同質ではないけれども、根本的な問題は世界共通だ。日本は世界で一番留学生がアルバイトしやすい国であるとも聞く。色々な問題を曖昧にごまかすのが得意な国でもあるのだろう。
 
サラゴサの街角で見つけたトロフィー専門店、そのショウウィンドウでは国籍不明のスター達が闘っていた。

 

(Photo And Text By Akira Inoue)

≪From Akira Inoue≫
OSTINATOD.S.D TrioParachuteArrange Island Show連歌 鳥の歌 2016