「レクイエム」


新しき酒を古き革袋に盛るひとはあらず、とは旧約聖書にある言葉だそうである。
だが、古きものが古きに留まらないことが厳然とある。新しき酒が古き革袋を再生させ、しかも古きもの、即ち時間の流れとその蓄積させた何かを新しきものに注ぎ込む、そんな奇跡を見聞きしている人は実は少なくない。
問題は古き革袋が如何に大切に使われてきたか、敬意と創意が注がれつつ歴史を刻んできたか、にかかっているのだろう。
革袋も時としてその形を変容させていく。古いという言葉のなかに変化を認めないという意味を偏重してはいけない。
縫い合わされたり、注ぎ口を取り替えたり、塗り直したりすることもあるだろう。でも、古いという価値はそれらの細かな事象を超えたところにこそ輝く。
 
古典的な箏は13本の弦を持つ。日本だけでは無く汎アジアの文化圏で、と言い添えることも出来るはずである。
低音の世界を拡げたいと願って、17本の弦を持つ箏を作りだしたひとがいた。そして、25本の弦を持つ箏を生みだしたのが野坂操壽先生であった。先生の音楽を古きと聴き取るのか、新しきと聴き取るのか。どちらかを選択せよというならば、まさに愚問と言うべきだろう。
古く新しき音を新しく古き楽器に歌わせたひとが野坂先生であった。
 
僕たちはまた大切な導き手を失ってしまった。
でも、古く新しき音を醸造する努めはこれからも僕たちに委ねられているのだ。
 
==野坂操壽先生に==
 
(Text and Photo By Akira Inoue)

 


≪From Akira Inoue≫
OSTINATOD.S.D TrioParachuteArrange Island Show連歌 鳥の歌 2016

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おかげさまで9/5に開催された「No Nuke Gig 2019」は世代もバックボーンもちがう表現者の皆さんが、ステージ上で大きな一つのメッセージを紡ぐ音楽会となりました。