「Morph」


Tom Pettyがこの世を去った、というニュースをTVで見た。実は久しぶりに見たTVのニュース、世情に興味を失った訳ではなくたまたまTVの無い環境に居た時間が数週間多かった、それだけのことだが。同時に流れていたアメリカ史上最悪の銃乱射事件という救いの無いニュースも鮮烈だった。その二つの事実のちょうど中間に、ラス・ベガスにおけるカントリーミュージックの大野外フェスティバルというこれまたいかにもアメリカ的な要素が有って、ニュースの中のTomのステージ映像は何やら儀式のワンシーンのように見えたのだった。
カントリーとロックを繋いだと評されるTomのことを久しぶりに思い出したとき、何故かMorphという言葉がふわりと浮かんできた。
Morphとは徐々に変容すること、変態することを指す言葉だが、どことなく解決点や到達点、結論がないままに揺れ動き気づけば遠くまで旅を経てしまっているイメージが漂う。

 

TomはBob Dylanの一歩後ろを歩きつつ変容を遂げていったように見える人だが、そもそもBob自身が歩いて行く行き先を知っていたとは到底思えない。
そして恐ろしげなのは不条理や敵意もまたMorphingしていくということ。32階の部屋なんて窓開かないじゃん、と思った僕は心底愚か者な訳で、予め用意したハンマーで高層ホテルの窓だって簡単に壊せるのだった。自国の音楽祭でそんな遠くから銃撃されるなどと思い描いた人はひとりもいなかっただろう。昨日までは、と書き添えなくてはならないが。

 

植物が変容していく様、紅葉していく森の色彩、Morphという言葉で描かれるのはそうした出来事だけで十分なのに。

(Photo And Text By Akira Inoue)

≪From Akira Inoue≫
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