「光合成」


英語で言うとPhotosynthesisという言葉になるそうだ。Synthesisは和訳すれば合成だから納得が行くけれどもPhotoの方は写真という訳語のイメージが強い。当然ながら写真とは光を定着させるプロセスなのだから、光そのものという意味も含まれるのだけれど、Lightではないんだね、という学びの印象は結構強いものだ。日本語でも英語の世界でも、曲のタイトルやユニット名にしたいようなシャープな語感の単語でもある。そもそも光から有機物を生み出す唯一の方法、ということは生物としてのヒトは全てこのシステムに依存している訳だ。

 

本川達雄さんは動物生理学の権威で代表的著書「ゾウの時間、ネズミの時間」は90年代のベストセラーであり、僕も楽しく読んだ記憶が鮮やかに残っている。最近見つけた「ウニはすごい、バッタもすごい」もデザインの生物学というサブタイトルが示す通り様々な生物についての愛情あふれる考察が詰まったなかなかの書物である。本川さんはナマコにひとかたならぬ感心をお持ちで、地球の環境はナマコにとっては天国なのだと教えてくれている。超省エネ、無駄の無いシステム、いわば地方分権主義が生物になったものがナマコなのだそうだ。中心としての脳もあり筋肉だらけの我々はエネルギーを使い過ぎ、その上システム的には中央集権的な存在なのだと知らされると、ナマコに対するリスペクトも心に湧き上がってくる。
植物や昆虫に対しても僕たちはすっかり無知で無神経になってしまっているし、何よりも驚きと尊敬が必要なのだと教えてくれる一冊である。

 

そういえばLondonでKew Gardenを訪れると植物に対する視線や感覚が変わるものだ。その形や色彩の多様性、そして辺りを包む何だか不思議なオーラ、世界中を駆けめぐって標本や植生を探し集めてきた人々の意思や好奇心。「光合成」の壮大なシンフォニーは無音だけれど休符だらけでは無い、明らかに何かを語りかけてくると感じる、その感覚は失いたくない。

(Photo And Text By Akira Inoue)

≪From Akira Inoue≫
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